夢の風景 (18)

彼が「どうしたらいいのかわからない」と電話してきて、あまりにも憔悴しきっていた。
たまたま目の前にいたので、急いで半分廃屋のような彼の一戸建てに入った。
湿った暑さの篭る部屋で、彼の目は血走り、上下のまぶたは殴られたのか泣き腫らしたのか真っ黒だった。
台所のまな板には捌きかけの大きな魚の頭と胴が切り離された状態で置かれ、残暑の中放置されていたからか、少し腐臭がしていた。
彼がどうしようどうしようと半狂乱でめくった座敷に敷かれた布団の中には、目と口を見開き泡を吹いている彼の母がいた。
何やってんだ、早く警察と救急車!と叫び、僕は電話を取った。「火事ですか、救急ですか」と問い掛ける電話の向こうの声を聞いている間に、凄まじい嘔吐をして彼の母の呼吸と脈は止まった。救急車はなかなか来ない。また間に合わなかったと、ただ空しく、全てが虚しく思えた。

白く塗ろう

ユトリロと聞けば、モンマルトルの丘の白い風景を思い浮かべ、高尚な気持ちで心の安定を得る方もあるかも知れない。

僕が思うところでは、まっすぐな道の両側に灰色の同じような高さの古い団地が遠方の消失点に向かって続き、冬の曇り空がそれに蓋をして薄暗く、足元の排水溝には浅い水に溺れ死んだ魚がぷかぷかと浮き、無表情に同じ顔をした奴隷達はそれを気にする事もなく踏み潰して歩く。

なぜそんな風景を想像するのか、理由は知らない。所詮、人の感性はばらばらで、同じ言葉を発しても決してわかりあえることはなく、間違った努力で無理に理解を強制しても、お互い不幸せになるだけだ。

生きている限り後悔や反省を繰り返すようなそういう人間なので、まずは世迷い事は独り言にするとして。白い壁に白い漆喰で模様を描いて、こっそりとその凶々しさに自省しなければならない。

僕の文章や歌の中で登場人物が悩み苦しみ、時には死んでしまうのは致し方なく、別に露悪趣味でやっているわけでもないので、そういうのに興味がある方にだけ届くように表現は注意しようと思う。

それでも、わがままだとは思いますが、年に一度くらいは負のオーラを全力で表に出す日を許してください。申し訳ありません。

世代間格差を許してもらえるだろうか

今週末に両親が上京してきて、12年ぶりに住んでいる室内を見られる事になった。

両親は高度成長期の中、20代半ばで結婚し、すぐに一戸建てを手に入れ、30歳までに子供を二人作り、後々大学までやりつつも40代半ばで住宅ローンを完済した。いわゆる中流家庭からスタートし、相当の努力をしたのだと思う。

30代半ばにして車を買った事もなく、横浜の築35年の賃貸2DKに住む長男夫婦を両親はどんな思いで見るのだろうか。

親世代では当たり前だった事が実現できていない体たらくを、冷静に客観的に受け止めてくれるだろうか。

立派な家財道具や生活基盤にではなく、楽器を中心に投資した僕のこの15年を、親が僕に期待し投資した成果物として許してもらえるだろうか。

恥の意識の強い両親なので、こんなところに住ませるのは嫁の実家に失礼だ、お前には一家の大黒柱としての自覚が足らない等と言いかねない。

自分の信念に基づく行動の結果だから何を言われても仕方ないとは言え、軽蔑も叱咤もなく穏便に終わってくれと願わずにはいられない。

近況とお詫びと遠望

思うところがあり近々に転職しようとしていたのですが、数年かかる治療のため、一旦全ての動きを中止撤回したのでご報告します。

今回はあちらこちらからお声をかけていただき、様々な所に散らばった学生時代の人脈等も頼らせていただきましたが、結局ご尽力を形にしてお返しすることが出来ず申し訳ありませんでした。

昨年末、食事が取りにくいほど顎の関節が痛い事があり、睡眠の品質も悪化してきていました。去年の12月に歯医者に行ったところ口が18mmしか開かなかったので、顎関節症の治療を始めました。スプリントと呼ばれるマウスピースをはめたり、関節円盤を移動させる処置をするなどして半年ほど治療していました。口はある程度開くようにはなったものの、顎の位置が変わり噛み合わせが悪化して、気分や体調が悪くなった旨伝えたところ、7月から口腔外科から矯正歯科に移ることになり、このほど治療計画が示されました。まだ治療開始の決断はしていませんが、今後のおおまかな予定は、

  • 1年~1年半かけて鶴見大学附属病院に通い歯列矯正を行う
  • 矯正がある程度進捗したら横浜労災病院で下顎の位置を移動させる手術を行う
  • 手術後、半年~1年半かけて鶴見大学に通院し最終矯正を行う

ということで、半月程度の入院や数ヶ月固いものが食べられない生活を送りつつ、全治は約3年というところでしょうか。

顎の破壊的再構築といった感じで、下顎の骨を両側で切り、適切な場所に移動させて、上顎と下顎の歯を矯正のワイヤー同士で縛り、閉じたまま数週間固定するんだそうです。経験者は死ぬほど痛いと言うそうですが痛みには強いので大丈夫でしょう。EINSTURZENDE NEIBAUTEN と MATMOS でも聞いて頑張ります。

顎の治療がこんな大事になるとは思っていなかったので、健康で文化的な最低限の生活を40歳頃にも送ることができるように早めにステップアップしようとしていたのですが、完治してからになりそうです。

32歳の今ジャンプしようとするのと35歳で同じ事をするのでは、後者ではとんでもないパワーが必要になるのは知っています。しかし顎の歪みのような不安箇所は治しておいた方が、真に歯を食いしばらなければならない時にちゃんと食いしばる事が出来て、結果としては最善なのではないかと思っています。

原因の一つ

日食が近くなるに連れ太陽の観測方法を目にする機会も増えた。

下敷きやサングラス越しでも、太陽を直視すれば数秒でも危険らしい。

ところで、僕の目は中央部分が極端に視力が悪く、周辺はマシなのでやや変わったコンタクトレンズを使っている。小学校の1年の終わりまでは2.0だった視力が2年生の間に一気に0.2まで落ちた。近視よりも乱視がきつく、色の認識も少しおかしくなった。

今思えば、当時はいつも20分の道のりを一人で歩いて帰っていて、誰に言われたわけでもないのに太陽を見つめ続けていた。ずっと見つめていると残像で視野が真っ黒になり目を開けているのに夜みたいになって、そこにはないはずの緑や青の鮮やかな閃光が走るのが好きだった。そうしているとなぜか溢れる涙も好きだった。

何も知らない頃とはいえ愚かに過ぎるし、見えなかったものもたくさんあったのだろうと思う。

あの寮食がなくなるのなら

カビとホコリの舞う暗いホールで何日も寝泊まりし、ステージや照明を組んで好き勝手やって最後に解体すると言う一連の流れは、初めて経験してから10年以上経っても身体に染み付いているように思う。

あの場の自由さは何十年も前の先達が交渉の末管理側から獲得したものを、それ以来自治会が脈々と受け継いできたものだからか、単なる廃屋をステージに仕立てるのとは違う、何か念のようなものが篭っている。

独立法人が吉田寮を建て直したら、恐らく居住棟だけで敷地は埋まる。仮にホールが得られたとしても、当初は予定調和のつまらない枠にはまるだろう。

寮食がなくなる事が、大学生の頃に得たと思っていた自治と自由が実はどこにもなかった事に気づいたのを象徴していた気がして、なんとも蜻蛉のようだと思った。

吉音6月ライブとしても寮食を会場とするのは最後かも知れない。かつて20代前半だった自分を葬り去るためにも、ここは一期一会メソッド発動か。

系統分類された場合

ざっくばらんな場においては、初対面の人から大抵、

同世代「君っていわゆる秋葉系だよね」

年配「君はマニアックな雰囲気の父ちゃん坊やだな」

と系統分類されます。

この評価は不本意なのですが、例えば単に痩せれば解消されるものでしょうか。

拙宅のエネルギー危機

台所のガステーブル2口のうち大きい方に火が点かなくなりました。

もっと深刻な危機が風呂についても発生しています。

うちは水を入れて沸かすタイプの風呂で、冷水しか蛇口からは供給されないのですが、数ヶ月前に沸かす部分についている機械式タイマーのゼンマイがねじ切れていらい、キッチンタイマーで加熱時間を計っていました。

しかし残念なことに今日を持って風呂釜は沈黙するに至り、しばらく銭湯生活と相成りました。横浜・大倉山近辺の安い銭湯・よい銭湯のご紹介などありましたら募集しております。

変則三段スタック

  • Head: Orange Tiny Terror
    Rockerverbは部屋が狭すぎて爆音を使いこなせず、フルテンで使える程度に。
  • 上段: Orange PPC112 100W 1×12″
    中音域が粘っこく鳴るキャビ。
  • 下段: Marshall 1552 500W 2×15″
    これは本来ベース用。キャビの許容入力に対してヘッドのパワーが足らないかもしれないけれど、この1552は凄まじく音が抜けるので十分よく鳴る。さすが神宮前のVict○r studioで20年近く鳴らされていただけはある。

理解のある周囲、同じマンションの方々に感謝しつつ、頑張って真空管をドライブして、自宅でもいい音を録ります。

うちは環境ノイズ多いですが、うちで録ってみたい方はご相談ください。

今月増えたもの

  1. 遠縁の親族

    21日は富士山の麓で従妹の結婚式。

    今まで行った中では一番盛大な披露宴だったかも知れない。

    8年弱も付き合っていたのだから、心配するまでもなく幸せになるだろうけれど、また新たな地に親族が増えた。あちらで会った人が皆大らかで温かな気がしたのは、気候と風土のせいだろうか。

  2. 体重

    一昨日は前祝の会食で、昨日は披露宴で、今日は本牧に250gパテのハンバーガーを食べに行ったりして、もはやあらやだとも言っていられない状況に。

  3. 悩み

    人生、努力すれば報われるなんて甘いことはこれっぽっちもないわけですが、最大限の努力が搾取に吸い上げられて終わるのは虚しい以外にない。

  4. 機材

    ある時より物欲を抑制しないように心がけたところ、最近どんどん音楽関係の機材が増えてきた。

    • Cubase 5を、予定通りバージョンアップで入手。
    • 楽器店でJoe Satrianiモデルのディストーションペダルが新品9800円で売られていたので衝動買い。

      やたら中域に癖があるので、人によっては使い物にならないかも知れないが、大学生の頃はメインのギターにサトリアーニモデルのピックアップを載せていた僕にとってはよい機種。2in1で、moreを踏むとさらに中域がブーストされ、ピッキングハーモニクスがキュインキュイン鳴る。ガリが出ているワウを直して合わせれば、昔好きだった音が出せるだろうか。

    • オークションで安く手に入った、IbanezのFixed Bridge 7弦。

      10年落ちなのにほぼミントコンディション。傷も反りもガリもなく、指板に手垢すらついていない。テンションもサステインもなかなかよい。

      気がつけばエレクトリックギターを買うのは6年前にストラトを買って以来で、Ibanez製品を買うのに至っては14年ぶりだ。これでやっと、10年前に書いた変則チューニングの7弦使用曲を心行くまで録れる。

    • 今週は Marshall のスタックのキャビネット、1552を譲ってもらえることになった。20年落ちだけれど大事に使われていて、8Ω/500W/15インチ×2発の45kgもあるキャビなので、さぞかし地の底を這うような低音が出るだろう。

      計画では、1552の上にOrangeのPPC112 (16Ω/100W/12インチ×1)を積んでその上にギターアンプ(Orange)と、これから選ぶベース用のヘッド(多分Ashdown)を乗せて切り替えて使う。

Joe Satrianiモデルのディストーション
Ibanezの7弦ギター

さて、車に凝る人を揶揄している場合でもないようで。

僕はいったい何を目指している人なのかを再度見つめ直して、無駄遣いはしないようにしようと思う。

使わない機材はそろそろ目録作って放出します。