回想列車

今日も仕事の帰りがこんな時間になってしまって、朦朧とした目で朝焼けを見る。12年前に一人暮らしを始めた頃を思い出す。現時点で僕が得たのは、若干の体脂肪くらいだ。何事もすべからく中途半端で、深く係わった人の多くから善意を搾取してばかりだった。
今日も改札で君が待っているわけでもないのに、往復2時間かかる家に帰る。電車に揺られるまどろみの中で夢か現かわからない君に久しぶりに会う。毎日声は聞いている気がするのに、形が見えることでほっとするのはなぜだろう。
これが君のところに向かう列車なら、このまま終点まで乗っていくのに。君があまりにも遠いから、僕はただいつも心配だけを繰り返す。だから今度生まれて来る時は、どんな因果律も曲げて同じ時に生まれ、また一億人から君を見つけてみせる。そして出来れば君のもっと近くで、もっと早くから、もっと幸せに、少しだけ器用に、ただ他愛のない毎日を過ごしたい。